ハザードマップを読み解く第一歩:自宅の災害リスク確認と避難計画の立て方
「災害に備えなきゃ」と思いつつも、「何から手をつければ良いのか分からない」と感じる方は少なくありません。特に、自宅や職場の周りにどんな災害リスクがあるのか、どう避難すれば良いのかという漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、災害からご自身と大切な方を守るための第一歩として、「ハザードマップ」の活用方法を分かりやすくご紹介します。ハザードマップを読み解き、具体的な避難計画を立てることで、いざという時の不安を軽減し、冷静な行動へと繋げる知恵を身につけましょう。
ハザードマップとは?災害リスクを「見える化」する地図
ハザードマップとは、自然災害による被害が予測される地域や、その危険の程度を地図上に示したものです。洪水、土砂災害、地震による揺れやすさ、津波、火山噴火など、様々な種類のハザードマップがあります。
この地図を見ることで、ご自身の住む地域や勤務地が、どのような災害の影響を受けやすいのか、その危険度を具体的に把握することができます。
なぜハザードマップが重要なのでしょうか?
ハザードマップは、単に危険な場所を示すだけでなく、災害時に適切な行動を取るための「羅針盤」となります。
- リスクの把握: どのような災害が、どの程度の規模で発生する可能性があるのかを知ることができます。
- 避難場所の確認: 災害時にどこへ避難すれば良いのか、指定された避難場所がどこにあるのかを確認できます。
- 避難経路の検討: 安全な避難経路を事前に確認し、危険な場所を避けるための計画を立てられます。
- 自宅の対策: 自宅の場所に応じた具体的な防災対策(例:浸水対策、家具固定など)を検討する際の参考になります。
ハザードマップを入手し、自宅の災害リスクを確認するステップ
ハザードマップは、誰でも無料で入手し、確認することができます。
ステップ1:ハザードマップを入手する
- インターネットでの確認: 多くの自治体では、公式ウェブサイトでハザードマップを公開しています。「(お住まいの地域名)ハザードマップ」と検索することで簡単に見つけられます。
- 自治体窓口での入手: 市役所や区役所の防災担当課などで、紙媒体のハザードマップを入手できる場合もあります。直接相談することで、より詳細な説明を受けられる可能性もあります。
ステップ2:自宅や職場の位置を確認する
入手したハザードマップ上で、ご自宅や勤務先の正確な位置を探しましょう。地図上に色分けされたエリアや記号が、どのような意味を持つのか、凡例(はんれい)を丁寧に確認してください。
- 洪水ハザードマップの例:
- 「浸水深」を示す色分け(例:水色なら50cm未満、濃い青なら3m以上など)
- 「浸水継続時間」を示す記号
- 「河川の氾濫危険箇所」を示すマーク
- 土砂災害ハザードマップの例:
- 「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」
- 「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」
- 地震ハザードマップの例:
- 「液状化の可能性」
- 「建物の倒壊危険度」
ご自身の場所がどのような危険区域に含まれているのか、具体的に把握することが重要です。
家族を守るための避難計画を立てる
ハザードマップでリスクを把握したら、次に具体的な避難計画を立てましょう。これは、いざという時に「どこへ」「どうやって」避難するかを決めておく大切なプロセスです。
避難計画作成のポイント
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避難場所の確認:
- 指定緊急避難場所: 災害の危険から一時的に身の安全を守るための場所です(例:学校の体育館、公民館など)。
- 指定避難所: 一時的な避難場所から、生活再建までの一時的な滞在場所となる場所です。
- ハザードマップにはこれらの場所が示されています。ご自宅から近い場所を複数確認し、家族間で共有しましょう。
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避難経路の検討:
- 自宅から避難場所までの経路を、ハザードマップで確認します。
- 複数の経路を検討: 一つの経路が災害で通行不能になる可能性も考慮し、最低2つ以上の安全な経路を考えておきましょう。
- 危険箇所の把握: 途中に土砂崩れの危険がある場所、冠水しやすいアンダーパス、電柱や看板など倒壊の危険があるものはないか、確認しておきましょう。
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家族での話し合いと共有:
- ハザードマップで確認したリスクや避難計画を、家族全員で共有することが非常に重要です。
- 「災害が発生した時、どこにいるか分からない場合、どう連絡を取り合うか」「誰が何を準備するか」といった具体的なルールを決めておきましょう。
- NTTの「災害用伝言ダイヤル(171)」や「災害用伝言板(web171)」など、連絡手段の確認も忘れずに行いましょう。
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避難のタイミングと判断基準:
- 自治体から発令される避難情報(高齢者等避難、避難指示など)の意味を理解し、迅速に避難できる判断基準を家族で共有しましょう。
- 「まだ大丈夫だろう」という油断は禁物です。早めの行動が命を守ります。
「心の準備」と日々の備え
ハザードマップを見て、自宅が危険区域にあることを知ると、不安を感じるかもしれません。しかし、これは「今、行動を起こすきっかけ」と捉えることができます。
- 不安の軽減: リスクを具体的に把握し、避難計画を立てることで、「何が起こるか分からない」という漠然とした不安は、「備えれば対処できる」という安心感に変わります。
- 定期的な見直し: 避難経路の状況は変わることがあります。家族構成やライフスタイルの変化に合わせて、年に一度はハザードマップと避難計画を見直すことをお勧めします。
- 地域との連携: 地域住民や自治会の防災訓練に参加することは、いざという時の行動力を高めるだけでなく、地域の情報共有や助け合いの輪を広げることにも繋がります。
まとめ:具体的な行動が、いざという時の「知恵」となる
ハザードマップを読み解き、避難計画を立てることは、決して難しいことではありません。最初の一歩を踏み出すことで、ご自身とご家族の命を守るための具体的な「知恵」と「行動力」を身につけることができます。
まずはご自宅のハザードマップを入手し、ご家族でゆっくりと確認することから始めてみませんか。この小さな一歩が、災害時に大きな力となるはずです。